『大人が知らない携帯サイトの世界(佐野正弘)』を読んだ感想

「携帯サイトも作ったら儲かるかね…」というスケベ根性で携帯サイトの作り方を調べてみたのですが、ろくな情報がないんですね ネットには。

PCサイトのホームページの作り方を解説したサイトは腐るほどあるのに、携帯サイトに関しては本当にたいした情報が無い。作り方にそれほどの違いはないだろうに、ですよ。

検索してもらうとわかりますが、そもそも 携帯サイトに関する情報自体がほとんど手に入りませんね。

これは さすがにおかしいな?と思ったわけです。

そこで、この疑問を解決するべく さっそく図書館に出向いて借り出したのがこちらの本です。

すぐそこにある異世界

結論から言うと”文化が違う”っていうことなんですね。

同じ”音楽ファン”の括りに分類されながら「演歌ファン」と「ジャズファン」に日常的な接点が無い様に、同じ「インターネット」の土俵にありながら、入り口がPCの人間と、携帯の人間の間には共通のコードが存在しないんだ….っていうわけです。

本書によれば、私がPCサイトの中から”携帯サイトの作り方”的な情報を見つけられなかったように、携帯サイトの方でも”PCサイトの作り方”的な情報はほとんど存在しないそうです。
なぜかというと 答えはものすごく簡単で…

それぞれの利用者が、互いに関心が無いから。

「大人が知らない〜」という書名があらわしているように、本書ではPCサイト利用者=年齢層高め(20代後半〜)、携帯サイト利用者=年齢低め(10代〜20代前半)といった感じで、両ツールの利用者層の違いを年代論的な区分で語っています。

ただ、おそらく重要なのは年代論ではなく、利用層の文化的背景(…っていうか嗜好ね)の部分だと思いますね。 

簡単にいえば以下のような分類になります。

  • PCサイト=オタク文化
  • 携帯サイト=非・オタク文化

「携帯サイトにおいては”電車男”は成立しなかっただろう」と本書は語っています。

「仮に 電車男氏が携帯系の掲示板サイトに書き込んだとしたら”キモイ”の一言で終わりだったろう」と。

いい悪いは別にしてこの辺のくだりで、ハタとひざを打ちましたね。

こうして日々PCサイトを見ている分にはなんの違和感も感じなかったんですが、そういわれてあらためて見渡してみると、確かに奇異の念に打たれるんですね。

「世の中一体いつから、コレほどまでにオタク(文化)に寛容になったんだろう…」、と。

“お台場に等身大ガンダムが…”とかいってみんな大騒ぎしてるんですが、冷静に考えてみると「学生時代 クラスの一体何人がガンダムに興味をもっていたろうか…」って話なんですね。

クラスの一体何人が「電車男」を応援しただろう、と。

クラスの一体何人が、深夜アニメに関する自分の嗜好を臆面無く披露できただろう、と。

でも、別に寛容になったわけじゃないんだよってことなんですね。

そうじゃなく、オタク文化に寛容な世界(PCサイト)を多く利用しているがゆえにそう錯覚してしまうっていうことなんですね。

別に、オタク文化がいいとか悪いとかいうコトではなくて、人間の思考はあくまで世界に…というか使用するツールの差異といった瑣末な部分においてもものすごく影響を受けてしまうもんなんだね、という。

これはものすごく深い話だと思います。

【2017.12.16追記】この記事を投稿してから8年。携帯サイトはもはや壊滅状態にありますね。