高校時代に 恋焦がれ、眠れぬ夜を 何度も 何度も 何度も 過ごしたあの人・・・
だというのに、あれからウン十年、そんな彼/彼女に 同窓会かなんかで再会して、その腹の出具合、頭の薄くなり具合にとんでもないモノを見た気になり、今お前がとんでもないのはそれはそれでいいとして、甘酸っぱい私の思い出を返して欲しい・・・的な気分に陥るというのはよく聞く話ではあります。
この“「ガロ」がiPad用電子書籍で復活”って記事(WEB魚拓)も、私なんかにしたらそれに近いものがありましたね。
「ガロ」がiPad用電子書籍で復活 「ガロ Ver2.0」
青林堂は、漫画雑誌「ガロ」をiPad用電子書籍アプリとして復活させた。…
“アングラ”とか”サブカル”とか。
そもそも、青林堂『ガロ』っていうのは、白土三平の「カムイ伝」を掲載するためだけに創刊された、社会性を帯びた硬派な漫画雑誌だったんですが、その後、つげ義春だの佐々木マキだのといった優秀な作家達が、実験的な作品を投稿するようになって、アングラ系漫画雑誌の代名詞になった伝説的な雑誌ですね。
全盛期という意味では、学生運動が盛んだった時代(それはつまり白土三平「カムイ伝」が連載されてた時代なわけですが…)ということになるんでしょうが、80年代以降も、南伸坊さんなんかが編集長をやって、いわゆる「サブカル」の分野を牽引する雑誌の一つとしてあり、赤瀬川原平、花輪和一、丸尾末広、蛭子能収、根本敬、みうらじゅん…といった歴代の執筆人を並べてみれば、ある年代以降にはなにか「グッ」とくるものを持ったそういうステキな雑誌だったわけです。
貧乏な雑誌
また、”漫画家に原稿料が出ない(出せない)雑誌”ということでも有名で、経営状態は常に火の車。
編集長(会長)・長井勝一のカリスマ性があってどうにかこうにかやりくりしていたところを、90年代半ばにどうにもならなくなって、PCソフト開発会社『ツァイト』に経営権を譲渡。
しばらくして内部分裂をおこして、以後うやむやのうちに世の中から忘れさられていった…といった、そういう経緯があります。
私が、愛読していたのは90年代半ばの頃で、長井勝一さんが会長に退くあたり。
当時は 花くまゆうさく、魚喃キリコ、逆柱いみり、古屋兎丸、秋山亜由子、東陽片岡といった人達が活躍していた時代でしたね。
中でも私が好きだったのは、津野裕子さんという方で、日本の田舎(富山あたり)を舞台にしてファンタジーを構築するという難事業を見事にやってのける手腕に感動しましたね。
『雨宮雪氷』とかすごくいい作品集だったなあ。
で、”iPad用電子書籍”はどうなの?
ま、それはともかく、経営譲渡したのがPCソフト開発会社ってのもあって、意外と早い時期からデジタル出版みたいなことをやってみたり(そしてこけてみたり)、WEB刊行企てたり(そしてこけてみたり)とかやってた事は知っていたので、今回の”iPad用電子書籍で復活”っていう記事にも、まあ「さもありなん」程度の気持ちで、リンクを飛んでいったんですが…
も、萌え系?
90年代後半の会社分裂劇で、いわゆる「本流」の方々は”青林工藝舎”という別の組織を立ち上げていますので、”青林堂”といっても、かつて私が見上げたものとは内容が大きく異なることは重々承知ではあるんですが…それにしても、それにしても。
現在の青林堂のサイトを見ますと、どうやらこれは規定路線(萌え?)であるようなので、最近の若い人達にとっては「青林堂つったらこれでしょ」って事なんでしょうが、“今お前がとんでもないのはそれはそれでいいとして…”というなにかそういうよくわからない感情がこみ上げてきて、なにか寂しいものがありましたね…。
とはいねまあ、”iPad用電子書籍”っていうもの自体がどの程度普及するもんなのかにも興味があるんで、そのへんに注目です。
2014年1月追記
…という上の記事は2010年10月に書いたものだったのですがその後『ガロver2.0』は2号で廃刊になったようです。
この話題について書かれた「記憶更新履歴(ウェブ日記)」さんの記事を引用させていただくと・・・
色々調べてついにわかったのですが、どうやらこのガロ Ver2.0、同人漫画、Web漫画を集めて雑誌にしたものだったようです。オリジナル創作系の同人っぽいノリだなー、と思ってたら、そもそもオリジナル創作系の同人漫画を集めた本だった!それも、既に結構な期間連載されておりストックがあるものばかり。おいおい日本初のiPad向け新作コミック誌って触れ込みはなんだったんだよ、と思いましたが、それはさておき面白い作品ばかりだったのは確かなので、それらと出会う切っ掛けをくれたというだけでも個人的には意味はありました。「2号で終わってしまった「ガロ Ver2.0」の続きを読む方法まとめ」
・・・とのこと。
で、せっかくなので・・・と思って青林堂の現在のHPを閲覧してみてこれまた仰天。
『ジャパニズム』という雑誌をはじめ「皇室論―伊勢神宮式年遷宮に寄せて」「日本を守るには何が必要か」「神々が集う地へ 出雲大社」などなど、なんともライト・ウィングな書籍がずらり(WEB魚拓)。
一応コミックも扱ってはいるようですが、「ネトラレ」「レズビアンⅢ」など、まさかのセクシー系!!
いやそれにしても「カムイ伝」からずいぶんと遠いところまでやってきたもんだね、と独りごちた2014年初春の出来事でした。
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